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東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」 2023年1月26日(木)〜4月9日(日)

東京都美術館で、4月9日(日)までの期間に開催される「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」。
今回はその開催概要についてお伝えします。

 

 

人間の内面をえぐる、強烈な表現力 

エゴン・シーレは、世紀末を経て芸術の爛熟期を迎えたウィーンで活躍した画家。
わずか28年という短い生涯の間に鮮烈な表現主義的作品を残し、美術の歴史に名を刻みました。
最年少でウィーンの美術学校に入学も保守的な教育に満足できず、退学して新たな芸術集団を立ち上げます。
当時の常識にとらわれない創作が社会の理解を得られずに逮捕されるなど、孤独と苦悩を抱えながら、ときに暴力的なまでの表現で人間の内面や性を生々しく描き出しました。

 

《ほおずきの実のある自画像》は、シーレの自画像のなかでもっともよく知られた作品です。
クローズアップで描かれた画家は、頭部を傾け、鑑賞者に視線を向けています。
シーレのまなざしは挑発的にも、いぶかしげにも、あるいは何かに怯えているかのようにも見えます。
青白い顔には赤、青、緑の絵具が、まるで血管のように、すばやい筆致で施されています。
本作の緊張感は、高さの不揃いな人物の肩と、ほおずきの蔓がおりなす構図からも生み出されています。
生涯に渡り自画像を描き続けたシーレは、世紀末のウィーンという多様な価値観が交錯し対立する世界に生きながら、自画像を通して自己のアイデンティティーを模索し続けました。

 

《自分を見つめる人Ⅱ(死と男)》の中央の人物は画家自身であり、目を閉じて瞑想にふけっているようです。
背後に迫るもう一人の人物は、赤、緑、黒と複数の色彩で表された手前の人物の顔面とは対照的に蒼白で、まぶたは窪み、頬はこけています。
いわば死人の顔です。
画家は自分自身と、近づいてくる自分の運命と対峙しているのです。
世紀末から20世紀にかけてのヨーロッパでは、生と死をテーマとする作品が数多く制作されました。
シーレもまた、自分自身の姿を重ねこの主題をたびたび取り上げましたが、本作は画家が21歳という若さで、普遍的な死の表現に到達しているという点できわめて興味深いものです。

 

個性的な人物画で知られるシーレですが、実は彼の全作品に占める風景画の比重は決して小さくありません。
クルマウ(現チェコのチェスキー・クルムコフ)は、シーレの母親の故郷であり、彼自身も何度か訪れた町です。
本作では高い視点から、家々がひしめく町全体が平面的にとらえられています。
小さな窓やアーチのある壁に、帽子のような屋根を頂く家並みは、中世の風景を思わせる風情があります。
シーレの風景は押しなべて静謐で、暗い色調の作品が多いなか、本作は構図や色彩にリズムがあり、おとぎの国のような雰囲気が漂います。

 

なお、期間中の月曜日は休館日となっております。
会期などは変更になる場合がありますので、最新情報は公式サイトでご確認ください。

エゴン・シーレ展 公式サイト
https://www.egonschiele2023.jp/



   


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