アートブログ
2023.7.18 [展覧会情報]
ニューヨークを拠点に幅広い表現活動を続けている荒木珠奈(1970-)は、へんてこなかわいらしさとゾクッとする感覚が混ざり合った世界観が魅力の作家です。
光と影、昔話、家や舟といった物語を想起させるようなモチーフを用いて、私たちの心の底にある懐かしい感覚や感情、記憶を揺さぶりながら、日常を越えた非日常の世界へと誘う作品を発表してきました。
20代でメキシコに留学、「明るさと暗さ」、「生と死」が共存する独特の文化に魅了されたという荒木の作品には、清濁あわせた人間の存在そのものを肯定するような眼差しが感じられます。
本展は、これまでに国内外で発表された詩情豊かな版画や立体作品をはじめ、2022年に東京都美術館のプログラムとして、ウクライナなどさまざまな国のルーツを持つこどもたちと荒木が共同制作したインスタレーションやメキシコの先住民と共同制作した絵本、鑑賞者参加型のインスタレーションなど、初期作品から近作までの約90点以上に加え、開催地である「上野の記憶」に着想を得た大型インスタレーションの新作を展示する、作家にとって初めての回顧展です。
さらに関連プログラムとして、造形ワークショップや鑑賞プログラムなどを多数開催します。
この夏、東京都美術館の地下空間で、まるで絵本を1ページずつめくっていくように、日常と非日常の境界を行き来する不思議な旅が味わえます。
物語性あふれる作品がもたらす鑑賞体験を通じて、荒木が近年関心を寄せている「越境」「多様性」「包摂」といった、国や地域を越えて現代社会が共通して抱えるテーマについて、思いを寄せ、日々の暮らしのかけがえのなさ、生きていくことが持つポジティブな力を見つめ直していただけるでしょう。
こどもから大人まで楽しめる、ちょっと怖くて懐かしい、不思議な展覧会にぜひご期待ください。
「上野の記憶」に着想を得た大型インスタレーションを新作
上野には昔からさまざまな人々を惹きつけ、受け入れてきた歴史と文化があります。
本展では、このような「上野の記憶」に着想を得て、土地の記憶が造形物と化したかのような、見る人の想像力をかきたてる大型のインスタレーションを新作しました。
美術館の「そこ(底)」とも言える天井高10mの地下展示室に、日常と非日常の境界を行き来するような、不思議な旅が味わえる空間をつくり上げます。
新作インスタレーションのためのドローイング 2022年 作家蔵
参加型作品、体感型展示、ワークショップも多数開催
鑑賞者が参加することで次々と様相を変え、カラフルで幻想的な展示空間が作り出されるインスタレーションや、現実と空想が融合したような詩情あふれる版画や立体作品などにより、地下の展示室全体を1つの地下空間と見立てた、ちょっと怖くて懐かしい空間を体感できる展示構成を試みます。
会期中は作家による造形ワークショップや、アート・コミュニケータとの鑑賞プログラムなどを多数開催します。
《Caos poetico (詩的な混沌)》2005年 東京都現代美術館蔵 Photo: Hiro Ihara
東京都美術館でのワークショップの様子 2022年 Photo: Shun Ishii
幅広い表現活動を続けてきたアーティスト・初めての回顧展
90年代から国内外のグループ展や個展で作品を発表してきた荒木珠奈。
本展では、初期の作品から、近作、本展のための最新作まで、約90点以上を展示します。
メキシコの先住民と共同制作したマヤ神話に基づく絵本、こどもたちとのワークショップから生まれた作品をはじめ、版画、立体作品、インスタレーションなど幅広いジャンルの多様な作品を網羅する、初めての回顧展です。
《Una marcha de los esqueletos (ガイコツの行進)》2004年 作家蔵
《NeNe Sol-末っ子の太陽-》2011年 作家蔵
左:試作版 右:挿絵 photo: Jun Asano
作家プロフィール
荒木珠奈(あらきたまな)Tamana Araki
東京都出身。メキシコ留学時代に版画の技法に出会い、90年代から、版画、立体作品、インスタレーションなど幅広い表現の作品を発表。ワークショップを通じて、こどもやメキシコの先住民などさまざまな人々と共同で作品制作も行う。
現在はニューヨークを拠点に、自身のペースで活動を続けている。
https://studiotamana.com/
Photo: Hiro Ihara
なお、期間中の月曜日、9月19日(火)は休室日となっております(ただし、8月14日(月)、9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開室)。
開催状況につきましては、展覧会公式サイトでご確認ください。
展覧会公式サイト