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京都国立近代美術館 甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性 2023年2月11日(土・祝)〜4月9日(日)

京都国立近代美術館 甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性 2023年2月11日(土・祝)〜4月9日(日)

《幻覚(踊る女)》 1920(大正9)年頃、絹本着色、183.5×105.0 cm 、京都国立近代美術館

 

京都国立近代美術館で、4月9日(日)までの期間に開催される甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性。
今回はその開催概要についてお伝えします。

 

「複雑かつ多面的な個性をもつ表現者」、甲斐荘楠音

本展は、さまざまな領域を越境した表現者・甲斐荘楠音(かいのしょうただおと/1894〜1978)の生涯にわたる創作の全貌を回顧するものです。
甲斐荘は大正期から昭和初期に日本画家として活躍し、革新的な日本画表現を世に問うた美術団体「国画創作協会」の会員として知られています。
通念としての理想美を描き出すのではなく、美醜相半ばする人間の生々しさを巧みに描写した甲斐荘の画風は、戦前の日本画壇で高く評価されました。
しかし、1940年代初頭に画業を中断した後は映画業界に転身。
長らくその成果が顧みられることはありませんでしたが、1970年代半ばから再評価の機運が高まり、没後20年を経た1997年には回顧展が開催されます。
そこで日本画家としての活動の全貌が初めて紹介され、同時に「京都画壇の異才」という定評を確立して今日に至ります。
美術館での2度目の回顧展となる本展では、日本画家という枠組みに収まりきらない甲斐荘の「越境性」を紹介します。
画家としての評価の影に隠れてしまった甲斐荘の別の側面──溝口健二ら稀代の映画監督を支えた風俗考証家、歌舞伎など演劇を愛好し、また自らも素人芝居に興じた趣味人としての活動は、これまでほとんど注目されていませんでした。
本展ではスクラップブック・写生帖・絵画・写真・映像・映画衣裳・ポスターなど、甲斐荘に関する資料のすべてを等しく展示します。
異色の日本画家から「複雑かつ多面的な個性をもつ表現者」へ、甲斐荘楠音を再定義することが本展の目的です。
これらの資料を渉猟すると、多岐にわたる興味と欲望の交錯、創造する個人の複雑な内面世界が見えてきます。
一つひとつの作品は、それらが収斂した重層的な結晶として再解釈されるはずです。
俳優がさまざまな役柄を演じ分けるように、多彩な顔をもった甲斐荘という一つの個性は、現代を生きる我々に少なからぬ示唆を与えてくれることでしょう。

 

なお、期間中の月曜日は休館日となっております。
開催状況につきましては、公式サイトでご確認ください。

京都国立近代美術館 公式サイト
https://www.momak.go.jp/



   


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