アートブログ
2023.7.21 [アーティスト紹介]
かわいさちこ《希望の力》
アートブログでは、Live Art Japanでアート作品を販売するアーティストを取り上げ、インタビューした内容をお届けします。
どのように作品を手がけているのか、アートに対する考え方など、制作にまつわるさまざまな情報を知ることで、作品の魅力もより深く理解できるのではないでしょうか。
第18回はかわいさちこさんに選んでいただいた、ご自身の代表作品についてのインタビューをお届けします。
──Live Art Japanにて登録している作品から、読者に知ってほしいものを1点選んでください。
《希望の力》
https://live-art.jp/sk01/
──選んだ作品について、どのような思い入れがありますか?
傷ついて虐げられた人たちが生まれ変わり、新天地で音楽を奏でる人間賛歌です。
具体的には国際平和美術展のテーマである「芸術からの平和希求」を意識しました。
この思いは人種や言語、男女などすべての違いを越えた多様性を表現していることからSDGsにつながり、翌年の同展に出展することができました。
──その作品の制作にあたって、どのようなアイデアが元になっているのでしょうか?
美術展の企画書からヒントを得ました。
2021年9月11日はアメリカ同時多発テロ事件から20年目の節目にあたります。
WTC跡地の「グラウンド・ゼロ」で行われた追悼式典と、同地に建設された「Oneワールドトレードセンター」がアイデアの元になっています。
そして、第29回の海外展がニューヨーク、カーネギーホールであることから「音楽」をヒントにしました。
──その作品が生まれた時期や制作過程について教えてください。
2020年から制作を開始して、一日およそ8時間~10時間かけました。
期間は1年くらいだと思いますが、もっと長い期間制作していた感覚です。
特にデッサンで多くの月日をかけました。
紆余曲折が続き、ある程度下描きが進んだときに立ち止まってしまいましたが、第三者に下書きの写真を見てもらい、ようやく客観視することができました。
視野の狭さに気づき、その日から構図が大きく変わりました。
宇宙に視野を広げたことで扉が開いた感覚です。
あとはひたすらデッサンを描き、線が徐々に定まりました。
その後、70×70㎝のワトソンボードに本描きします。
下地を塗り、線描き、アクリル絵の具で色づけして完成です。
──その作品が作られた当時の社会情勢や文化的な背景について、どのような影響を受けましたか?
コロナ禍のまっただなか、2020年から2021年にかけて制作してきました。
いろいろな不安を抱えていましたが、それをプラスにとり自宅にこもる期間と捉えました。
毎日が自分とじっくり向き合う時間でもありました。
さらに、2022年の第30回展はロシアのウクライナ危機のまっただなかでした。
誰もが心を痛め、無力感にさいなまれた時期です。
そのような状況下で国際平和美術展が開催されたことに、大きな意義を感じています。
──その作品のテーマや意図について、どのようなメッセージを伝えたいと思っていたのでしょうか?
2021年「第29回 国際平和美術展」は、傷つき虐げられた民衆の勝利劇を詩に込めました。
「希望の力」
雨あがり
宙の波音に誘われて
地平線から飛び出した
見つけたのは新しい星
さあ みんな集まれ
次のステージだ!
鼓動が高鳴る歓喜のリズム
もっと自由に
もっと大きく高らかに
2022年 「第30回国際平和美術展」の国際展はユネスコパリ本部内で開催されましたが、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」をヒントにしてメッセージを考えました。
特にNo.5「ジェンダー平等を実現しよう」を意識しました。
「希望の力」
さあ 飛び立とう!
やっと見つけた新しい舞台
脇役なんていない
誰もがみんな主人公
さあ みんな集まれ!
平等の世界へ出発だ
もっと大きな輪をつくろう
もっと高く
もっと自由に舞い上がれ!
──その作品が、あなたの作品の中で特別な意味を持っていると思いますか?
画風が少しずつ変化しているのでそう言えるかもしれません。
油彩画を描いていたときは人間の悪の部分を強調したので暗い色調でした。筆使いも今と違います。
その後アクリル絵の具を使うことで明るい色調になり、人間の善の部分を強調しようと試みてきましたが、一方で悪や人の裏側といった影も意識していました。
しかし《希望の力》は悪や影の部分が表現されてない世界観で、新たなキャラクターが登場している点で特別です。
──その作品を見る人に、何を感じてほしいと思っていますか?
《希望の力》は、メッセージと合わせて一つの作品になっています。
明るくて面白いだけでなく、裏側に何が隠されているのかメッセージから想像してもらえればうれしいです。
──その作品が、今後の作品制作にどのような影響を与えましたか?
《希望の力》は人生の大きな節目になっています。
具体的には2021年に開催された展示会は東京の芸術劇場をはじめ、海外展はニューヨークカーネギーホールで展示され感謝状を戴きました。
2022年はユネスコパリ本部に展示させていただき、戦時下にも関わらずウクライナの児童雑誌『ポズナイカ』編集長よりお礼状をいただきました。
このようなできごとは自分に大きな自信を与えてくれました。
もっと面白い物語を紡ぎ出せるよう、創作活動を続けていきたいと決意することができました。
そして、第29回展以降「えがいて つむいで」の初出版のお話をいただき、展示会のご依頼やLive Art Japanの皆さまとご縁が重なりました。
──その作品を制作していた当時の気持ちや想い出について、教えてください。
「進んでは立ち止まる」を繰り返していたので、「くる楽しい」の連続でした。
下描きを終え、着色するときはキャラクターに命を吹き込むようていねいに描きました。
調子のよい時は「We Are The World」の楽曲が頭の中をぐるぐる流れていました。
しかし、順調な時間は長く続きません。
位置、配色、身体の向き、アイテムなどさまざまな変更が必要でした。
一つひとつ壁をよじ登るとその先が見渡せ、一気に筆が進んでいきます。
それでも次の壁が立ちはだかるといった繰り返しでした。
中途半端な気持ちでは完成しないと思いながら筆を進めていました。
ようやく完成したとき「やったー!」と声をあげ両手でばんざいしました。
メッセージについては、自分がキャラクターの一人になりきって創ったので、楽しい反面、絞り出しながら言葉選びをしました。
やはり「くる楽しい」心境でした。
今後もかわいさちこさんの作品や活動に、ぜひご注目ください。
執筆:Live Art Japan編集部